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マンション管理人.com

管理人をやりながら、世の中の色々を見ていきたい。

小説「マンション管理人.com」第一話①

小説「マンション管理人.com」
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2016.11.01

 小説「マンション管理人.com」

 

  夏の終わり、日差しはもうすっかり夏のそれとは呼べないものだったが、それでも最後の力を振り絞るように強くそそいでいた。
 

  「おい!雄介、お昼どうする?」
 声をかけてきたのは、西島聡(にしじまさとし)だ。営業課の同期で、役職は同じ係長だ。
 「ごめん、俺クライアントの連絡待ちだから今日は一人で行ってくれる?」
 「あ、そう。どこ?」
 「オハラ工業さん」
 「雄介のお得意さんか。じゃ、しょうがないな」
 「悪いな、また一緒に食べよう」
 「じゃ、軽くラーメンでも行ってくるわ」
 西島は背を向けたまま、右手を軽く上げて事務所を出て行った。

 

 小笠原雄介(おがさわらゆうすけ)は求人広告の代理店の営業マンだ。今年、三十七歳でまだ独身だが焦りはない。と言うのも、地元の旧友達も会社の同僚も同年代の独身者が多いためだ。
 係長と言っても部下はいない。この会社の役職は、課長までは前期の営業成績で決まる。
 前期の営業成績の査定によって、今期も同じ役職を守れたもの、降格になったものと分かれる。昇格については、かなりの好成績と部長の推薦が必要だ。
 そう、課長までは全員一営業マンで、真の上司と言うのは部長からと言う、大変営業色の濃い会社だ。

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 雄介はこの会社が気に入っていた。部下など持つのは御免こうむりたい質だ。
 現在、係長で年収も六百六十万円あり、会社の独身寮に光熱費込みで月二万円で入居しており、経済的にはかなり楽な生活をしている。まさに、独身貴族そのものだ。
 出身は神戸だが、転勤で広島県福山市に来ている。事務所はJR福山駅からすぐにあり駅を挟んで反対側に社宅がある。事務所・駅・社宅この三角形がすべて徒歩五分以内に収まる生活をしており、実家の神戸より住み心地がいいくらいだ。
 

 気がかりと言えばただ一つだ。両親の事だ。雄介は両親が歳をとってからの子供で、三十七歳の親にしては、母が七十七歳・父が七十六歳と高齢なのだ。
 雄介には姉がいるが、歳が十三離れており今年五十歳になる。若くして嫁に嫁いだので、あまり付き合いがなく、兄弟だが年賀状のやり取りぐらいの仲で、近況はもっぱら両親から聞くぐらいだ。
 なんでも、嫁いだ先の義理の父親が、寝たきりの生活になり介護が大変らしい。
 で、漠然とだが雄介も自分の両親がへばれば、どうなるか分かったものではないなと、少し心配しているのだ。
 その予感めいた心配は当たってしまう。

 

つづく。

byおしょぶ~