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小説「マンション管理人.com」第一話②

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2016.11.04

  

 十一月に向けての営業会議が終わり、雄介は会議室から出てきて喫茶コーナーに向かうところだった。
 「小笠原さん!二番、菅野様と言う方からお電話です」
 事務所一の美人である事務の御手洗京子(みたらいきょうこ)が声をかけた。
 「はて?菅野さん」雄介は独り言を言いながら、受話器を上げた。
 「お電話変わりました。営業の小笠原でございます」
 「あ、お仕事中にすみません。私、お父様とお母様のケアマネジャーをしております菅野と申します」
 ケアマネジャー…
 「実はお父様には息子様には連絡しないでと言われておりましたが、限界と思い私の考えで、家にあった名刺を頼りに連絡させていただきました」
 雄介は、もう嫌な予感しかしないな、と思いながらその菅野の話に耳を傾けた。
 
 

 十月の終わり、雄介は有給を五日間申請して新幹線の車中にいた。前後の土日を合わせて九連休を組んだのだ。
 社内カレンダー以外で九連休は始めての経験だ。しかし、この九日間でも問題は解決しないのは明白だった。
 雄介は、窓から外を眺めながら、ここ二・三年実家に帰らず、電話でたまに父親と話すだけにしていたことを後悔していた。
 ケアマネジャーの菅野の話によると、母の様子がおかしくなってすでに一年が経つらしい。まだ体は動くものの、言動・行動がかなりおかしいらしい。

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 父がめんどうを見ているが、困り果てて市の窓口に相談に行き、担当ケアマネージャーもつき、要介護認定も済んで母は要介護度3である。
 その母は認知症の進行が早いうえに、歩くのも難しくなりつつあると菅野から伝えられ、雄介は母が長らく膝を痛めていたのを思い出した。父は雄介への配慮か、自分一人で十分と思ったのか、ケアマネージャーに息子への連絡はしないでくれとずっと言っていたらしい。
 

 

 しかし此処にきて、どうやら父の様子もおかしいらしい。菅野は「もはやここまで」との思いで、父には言わずに雄介に連絡をしてきたと言うわけだ。
 福山から西明石は新幹線で、一時間程でついてしまう距離だ。雄介の実家は兵庫県神戸市垂水区にあり、新神戸駅より西明石駅の方が便利だ。
 西明石駅に降り立った雄介は、「こんなにすぐ着く距離なのに、ほったらかしにしすぎたな」とひとりごちし、歩を在来線の西明石駅に進めた。

 雄介の実家はJR垂水駅からバスでおよそ十五分乗り、バス停からさらに十分ほど歩くので、神戸市内とは言え便利な場所ではない。

 つい、不便さもあり帰省時には、毎回タクシーに乗ってしまう雄介だった。

 

つづく。

by おしょぶ~

 

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