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小説「マンション管理人.com」第一話③

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2016.11.05

 

 

 実家は市営の集合住宅だ。所得により家賃が毎年上下するが、ここ十年ほどは上限に張り付いている。雄介は寮住まいで、転勤がいつあってもおかしくないので、住民票を実家に残したままにしているため、雄介の年収が加算され家賃が高止まりしている。

 もちろん、雄介は自分のせいで上がっている家賃分は、仕送りしているので経済的に両親が困っている事はない。

  

「あ、運転手さんここで結構です」

 雄介は実家がある八号棟の少し手前からタクシーを降りて、二階部分を遠目でしばらく眺めていた。こちら側から見えるのは、ベランダと父の部屋と、ダイニングキッチンだ。

 まだ、陽は落ちていないが両方とも灯りがついていた。「ふぅ」雄介は一息ため息をついて歩き出した。

 建物の正面へまわり、階段を二階に上がるとすぐ右手が玄関のドアだ。踊り場を右に曲がって、雄介は目を見張った。ドアに張り紙がいっぱい貼られているのだ。

 真っ先に頭に浮かんだのが、借金取りの張り紙だがよく見ると母の字だ。

 「しらない女の人は家にいれません」「私はだれも呼んでいません」「私は何処にも行きません」など6枚A4ほどの紙が貼られていた。

 「なんやこれ!」雄介は大きな声で独り言を言って、玄関のドアのカギを開けて「ただいまー」と入って行った。

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  誰の返事もなく、左の方から洗濯機が回る音がしている以外静かだ。玄関にサンダルが二足あるので、おそらく両親は居るはずだ。

 雄介は急いで家へ上がり、ダイニングから和室に入った。そこには雄介の知らない病院で使うようなベッドが置かれており、しらない老婆が寝ていた。

 そのベッドの横に、後ろ姿からおそらく父だろうと思う男が、ベッドにもたれ掛かる形で寝ていた。

 ならばこの知らない老婆は、そうは思いたくないが母だろうなと雄介は思った。老けたのは当然としても、顔つきと言うか人相まで変わってしまっているではないか。

  父を起こすのもかわいそうなので、そのまま自分の部屋に入った。以前同居していた頃と変わらないままだ。父が掃除をしていてくれたのだろう。

 

 雄介は自分の部屋で、今ある情報を頼りに頭の中を整理していた。母のあの様子だと今は歩けるらしいが、先はあやしい。菅野の話だと父の様子もこの頃おかしくなり始めている、となると先々はW介護がまっていると言う事だ。

 姉には頼れないだろう。よくしてもらえて、お金を送ってもらえるぐらいと考えていた方が賢明だ。仕事は続けられるだろうか?おそらく事情を話せば神戸支店への転勤希望は通るだろうが…

 

つづく。

by おしょぶ~

 

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