マンション管理人.com

管理人をやりながら、世の中の色々を見ていきたい。

小説「マンション管理人.com」第一話④

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2016.11.07

 

「雄介か?」父の声がした。すぐ自分の部屋を出てリビングに向かった。

起きて、玄関の靴と荷物を見て気が付いたのだろう、父がリビングに立っていた。

「ただいま」

「おう、おかえり久しぶりやな。元気か?」

「俺は大丈夫。そっちはどう?」

 

リビングのテーブルにお互い座りながら話す。見た感じ父は元気そうで、二年ほど前とさほど変わらないように見える。父は問題なさそうだなと雄介は思った。

「なんや、今日は出張か?」

「いや、ケアマネージャーの菅野さんから、かあさんの調子が悪いと聞いてさ、一週間休みがもらえたから、様子を見に帰ってきた」

「そうか、あのおばはんには黙っとくよう言うたのにな」

「まぁまぁ、菅野さんも心配してくれているんだよ。それにおばはんとか言ったらダメだよ。」

「けっ、お茶でも飲むか」

「いや、ビール飲むわ」

「そうか、まぁ好きにせいや。じゃ、一週間ほど泊りやな」

「ああ」

 

 父は立ち上がり、母のベッドへ向かった。おそらく母を起こして俺が帰って来た事を伝えるつもりだろう。

「ああ、父さん、起こさなくていいよ。自然に起きた時に挨拶するわ」

「そうか」父は目を細めて、そう言うと自分の部屋へ入っていった。

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  次の日曜日、雄介は目が覚めると天井がいつもと違うのに驚いたが、すぐに実家に帰って来ている事を思い出した。

 昨日は父と少し話したあと、冷蔵庫から缶ビールを出し、自分の部屋で駅で買った乾きもので一杯やりながら、どこかで寝てしまったらしい。

 しかし、ちゃんとパジャマに着替えてベッドで寝ているところが、酔っ払いの不思議だ。着替えた覚えも、ベッドに入った覚えもない。
 雄介はトイレのあと、洗面台で顔を洗いリビングに顔を出した。
「おはよう」
「おお、起きたか」父が言った。
 ダイニングテーブルに車椅子のまま座っている、母であろう老婆の後ろ姿があった。
 雄介は少し躊躇ったが、声のトーンをあげて、その後ろ姿の肩に手を置き声をかけた。「ただいま、雄介やで」
 振り向いた老婆は、きょとんとした目で雄介を見ると、うんうんと頷いた。

 「あんた、仕事は?」
 「あぁ、ちょっと休暇をもらって帰ってきたわ」
 「そうか…」
 それから母は黙ってしまったが、会話のつじつまが合っていたので、少し安心する雄介だった。ただ、話し方に抑揚がないのは引っ掛かった。

 

 母の朝食は、どうやら宅配の弁当が届いているようだ。そのお弁当のおかずを、父がスプーンで小さく刻みながら、母に食べさせている。
 横目でその様子を見ながら、雄介もダイニングテーブルに座り、自分で淹れた珈琲をすすった。雄介は、新聞を見てはいたが、大きな字しか追っておらず、頭の中の半分で明日の月曜日にはケアマネージャー菅野と会って、詳しく話を聞かなければと考えていた。

つづく。

by おしょぶ~

 

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