おしょぶ~の~と

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小説「マンション管理人.com」第一話⑤

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 2016.11.10

 

 おおかた母の食事は終わったようだ。

 ふと思いついて残っているおかずを雄介は指でつまんでみた。「まず…」思わず口に出た感想だ。この味付けはないわと思ったが、別に父には言わなかった。

 雄介はもし家に帰る事になったら、もう少しうまいものを母に食べさそうと思った。 

 父が片づけを済ませ、トイレにたった。雄介が後を引き継ぎ、返却するため弁当箱を洗おうとしたとき母が話し出した。

「雄介」
「うん?」
「スパーの前にパソコン教室があるやろ」
「あぁ、あるな。親父が通っているところやろ」
 父は数年前から「ボケ防止や」と言って、趣味でパソコンを始めていた。なかなか気に入ったようで、近くのパソコン教室に通っている。雄介は良い事だなと建設的にとらえている。
「あそこな、とんでもないところやで!」
「え?どう言うこと」
「あそこは、全国的な売春組織や。お父さんも騙されている。今度警察に言いに行くつもりやから、あんたついて来てな」
「…」
 あまりの事に、すぐ言葉が出てこなかった。母が完全に壊れているのを、認識した雄介だった。

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 父がトイレから帰ってきた。またダイニングテーブルに座り、母と話し始めた。「急に冷えてきたとか」とか「明日は燃えるゴミの日だとか」話していた。
 先ほどの会話の事は話さず、横で珈琲を飲みながら母がすごいやきもち妬きだった事を思い出していた。
 すごく前の話だが、父がバレンタインデーに会社の事務の女の子から、チョコレートをもらって帰ってきた。よくある話だ。もちろん義理チョコだろう。
 だが、母はそれこそ泣きわめいて父を罵倒しチョコレートを窓からまき散らすように捨てた。その様子を雄介は、あきれ果てて見たものだ。

 

 

 近所迷惑になるので、雄介がチョコレートを外に拾いに行き纏めてゴミ箱に捨てた。その様子を父がバツの悪そうな顔で見ていたのをよく覚えている。

 認知症がひどくなると妄想するらしいが、母の父に対する嫉妬心が火をつけているのだろうか?父は、雄介から見ても、母を大切にしている主人ではなかったのだ。

 

 稼いできたお金は全て渡すタイプではなく、「これぐらいで足りるやろ」と見込みで渡すが、それはかなり少な目だ。まぁ、大人になってから分かった事だが家計が足りないので仕方なく、母が働きに出て雄介は鍵っ子となって寂しい思いをしたが、父のそう言う振る舞いが原因だった。

 

 父は不倫をしていたのかもしれないな、と雄介は思っているが事の真相は分からないし、今に至ってはどちらでもよかった。

 ただ、若い頃に母がそうした疑いを持ちながら、父と暮らしていた心の中のブラックホールの様なものが、今の認知症の母の精神に影響しているかもしれないと雄介は思った。

 

つづく。

by おしょぶ~ 

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