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マンション管理人.com

管理人をやりながら、世の中の色々を見ていきたい。

小説「マンション管理人.com」第一話⑥

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 2016.11.14

 

 月曜日、雄介は三ノ宮にいた。三宮は政令指定都市神戸の中心の街で、オフィス街も歓楽街もあり賑やかだ。ただ夜の引けは早く、終電が無くなればいっぺんに静かになる。

 雄介は神戸が大好きだが、夜が早いのが気にいらない。大阪の南や、今働いている広島のえびす辺りは遅くまで楽しめる。福山から週末は広島までよく遊びに出かけた。

 今日は、夕方からケアマネージャーの菅野と初めて会うことになっていた。午前中にでも、会って話を聞きたかったが中々忙しいらしい。夕方まで時間が空いたので気晴らしに三宮まで出てきたと言うわけだ。

 

 「なつかしいなぁ」誰に言うではなく、背伸びをしながら雄介はJR三宮駅に降り立った。雄介に言わせると、神戸には神戸の匂いがあるらしい。

 夕方から菅野と会う約束がなければ、昼酒といきたいところだが、駅の北側すぐにある「にしむら」と言う喫茶店でゆっくする事にした。

 広島県福山支社に転勤する前は、雄介は神戸支社で主任として働いていた。その時、息抜きに来るのが決まってこの「にしむら」だった。フルサービスの喫茶店なので、珈琲一杯が五百五十円とけっして安くはないが、味的にも店の雰囲気も合わせて十分価値のある一杯と言うのが雄介の評だ。

 

 雄介は学生時代、「さんちか」と言う神戸を代表する地下街にある「明和館」と言う珈琲専門店でアルバイトをしていた。そこで初めてサイフォン珈琲に出合い、珈琲豆に種類がある事を知った。

 雄介は珈琲に夢中になった。初めてのバイト代で、サイフォン・アルコールランプ・手で回すミルを買った。豆の違いで味がどれほど変わるのか、ドリップ珈琲と比べたりとけっこうな趣味になっていた。

 

 今はそこまでやってはいないが、珈琲好きは変わらない。「にしむら」のブレンドは酸味が強く雄介の好みに合っているのも、長く通っている理由だ。

 雄介を驚かせたのは、三年来ない間に喫煙席が二階のずいぶん奥に追いやられ、しかもかなり狭くなっていた事だった。「たばこ吸いはついにここまで追いやられたか」とひとりごちし、苦笑しながらテーブルについた。

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 ブレンド珈琲を注文した雄介は、お店のサービス台まで自分で行き、そこからマッチを貰ってきた。珈琲と共に、ここのマッチがお気に入りだ。古臭いデザインと言えなくもないが、なんとなくお洒落を感じさせるマッチだ。

 

 出て来た珈琲を口元に運び「あ~この香、このかおり」とひとりごちしながら、雄介の思考は今後の事に向けられた。今日の話がどんな内容だろうと、母の様子があれでは近々父一人では看れなくなる。

 早めに手は打っておかないと…心の中で言った雄介はスマートホンの画面で営業部長、金沢 尚介(かなざわ なおすけ)のアドレスを探した。

 

つづく。

by おしょぶ~

小説「マンション管理人.com」第一話① - マンション管理人.com

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