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小説「マンション管理人.com」第一話⑦

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2016.11.15

 

 

 金沢 尚介は雄介が務める福山支社の営業部長だ。事務方には課長職以上がいないので、実質支社のトップで、支社長代理も兼務している。俗にどぶ板営業と言われるビルの上から下まで企業のドアを叩き、名刺を集め、手にガムテープで受話器を巻き付けテレアポ取りをして広告を売ってきた叩き上げだ。
 

 今はその会社も業界の上位の位置にあり、ホームページから広告の問い合わせが入る事も珍しくなく、こちらと親和性の高い企業リストがつくられてかなり営業活動が楽になっている。金沢は、まるで別の会社にいる錯覚まで起こしそうで、心中で苦笑する毎日だ。
 

 セクハラだの、パワハラだの今まで普通の事が通じない。完全週休二日で、本当に週二日休む営業マンがいる事が信じられない。中小企業の管理職は土曜日はまず出勤している。ならば、本当に商売敵が土曜日休みで営業をかけて行かないなら、営業をかける絶好のチャンスじゃないか!

 

 金沢は先日の光景を思い出しながら、言葉にはせずに自分の席から見える男を睨みながら心中で罵倒した。あれは金曜の帰り間際だった。

 

「あーその件でしたら、来週の月曜日にお伺いします。ええ、あっそうですか」
「ええ、はい。いやぁ当社土日は休みでして…ええ、あぁそうですか。申し訳ございません。また機会がありましたら。」
「はい。失礼します」
「ふ~」大きくため息をついて、係長の西島は受話器を置いた。
「どうしたんだ?西島」
「いや、部長。先塚商店さんなんですけど、広告を考えているので来てくれと」
「それで?」
「お忙しいみたいで、土曜日しか時間がとれないらしくて…」
「ふん。それで?」
「?いや、それだけのことです」
「それで、お前商談を断ったのか?」
「断ったと言うか、月曜日でとお願いしたら断られました」
「…」

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 怒鳴りちらしたかった。罵倒したかった。営業の神髄をこれと言うぐらい思い知らせてやりたい。しかし、金沢は堪えた。時代が違うのだ。
 金沢はそうは思っていない。「営業に時代もくそもあるか!」行きつけのスナックではママ相手に、とうとうと語った。
 

 しかし、会社が時代が違うと言うのだ。最近は部長研修となると、ほとんどコンプライアンス関係だ。内部告発で、セクハラ・パワハラが認められたら一発降格だ。
 金沢は、どぶ板営業でここまで上がってきた。年収は1000万円を超えている。つまらない事で、足をすくわれるわけにはいかない。

 

 冷静に指導をするのだ。商談の大きさや、今後の発展ぐわいの予想から土曜日でも商談を受ける事も考え、後日他のアポや内部作業を調整して代休を取りなさいと…
 プライベートの件でどうしても商談が無理なら、断る前にわたしに振りなさいと…
 課長か部長のわたしが代わりに商談に行くからと…

 

 冷静にそう言えば彼も「いやいやそんな!部長に行ってもらうなんてとんでもない!」と言うだろう。あんうんで、わたしの伝えたい事を理解してくれるだろう。

 

 金沢は喫茶コーナーに西島を呼び冷静に話してきかせた。
 西島は「わかりました。今後そのような事があれば部長に行って頂きます」と一礼して自分のデスクに戻っていった。

 

つづく。

by おしょぶ~ 

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