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マンション管理人.com

管理人をやりながら、世の中の色々を見ていきたい。

小説「マンション管理人.com」第一話⑧

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http://www.ac-illust.com/

2016.11.17

 

 

 金沢のはらわたは煮えくり返っていた。西島のあの態度はなんだ!いや態度ではない。態度は悪くないが、考え方が営業向きではなさすぎるのだ。
 

 

 実は福山支社の営業課長は金沢より年上で、今年を最後に早期退職制度の利用を選び退職が決まっている。彼はそろそろ潮時で良い判断だと金沢も納得している。
 次の営業課長について人事担当役員から意見を聞かれる場面があった。金沢が意見したからと言ってそれで決まるわけではないが、ひとつの判断材料にはなるだろう。その時、金沢は西島と小笠原の両名を推薦した。

 

 二名を推薦したのには理由がある。もうすぐ呉の営業所でもトップの空きが出ると噂があるからだ。営業所のトップは課長職が務める。そこにどちらかを滑り込ませれば、自分の息のかかった部下で中国地方を固める事が出来る。
 

  そう、金沢はまだ上を狙っている。営業成績的にも、西島と小笠原は拮抗しており二名推薦でもなんらおかしくはない。

 金沢は決めた。次の部長会議で正式に人事が話し合われる、西島を呉に小笠原を手元の課長におくように働きかけようと。なぁに、理由などどうとでも言える。
 

 

その考えがまとまると、口元が自然に緩んだ。そう決めてしまえば、目の前にいる西島を見ても腹が立たなくなってきた金沢だった。

 

 

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 さて、決済の書類でもと思った時スマートホンが震えた。「うん?小笠原からメールだ」金沢はひとりごちし、メールを開けた。
 

 「お疲れ様です。いま有給を頂き帰省中ですが、ご相談したい事がございます。少し長い話となりますので、ご都合の良い時間をメールで教えて頂きますようお願いいたします。時間が来ましたら、わたしの方からお電話させて頂きます」
 金沢は舌打ちした。こう言うメールはまず金沢にとって良い事があったためしがない、多くの部下を使ってきた経験則が、心にそう言うのだ。

 

 金沢は「五分後で、いい」と短いメールを送った。
 事務方に、喫茶コーナーにいる事と重要案件でなければ、掛かってくる電話は折り返しにするよう指示をだし、喫茶コーナーに向かった。
 少し疲れを感じた金沢は、自動販売機で砂糖を追加した甘めの珈琲を買って席についた。珈琲を一口すすると、小笠原からの電話が入った。

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 「はい。うん、お疲れ様」
 「いや、気にするな。うん…  うん…」
 金沢は聞き役に徹した。小笠原の話に真摯に耳を傾けた。さすが、営業のホープと金沢が認めるだけあり、小笠原の話は論点が纏まっており彼の現状が手に取るように理解で来た。

 

 金沢は、野心家で策略家ではあったがあくまで仕事上の話で、基本的に人の良い人間だ。話を最後まで聞いて「大丈夫だ。俺が全て上手くやってやる。心配するな」と言い、詳しくは福山に帰った時に打ち合わせるとして電話を切った。
 

 

 金沢は電話を切って宙を見ながら思わず出た苦笑いの後、「仕方ない、西島と上手くやっていくか」と少し大きめな声でひとりごちし、再び珈琲を口に運んだ。

 つづく。

by おしょぶ~

小説「マンション管理人.com」第一話① - マンション管理人.com

小説「マンション管理人.com」第一話② - マンション管理人.com

小説「マンション管理人.com」第一話③ - マンション管理人.com

小説「マンション管理人.com」第一話④ - マンション管理人.com

小説「マンション管理人.com」第一話⑤ - マンション管理人.com

小説「マンション管理人.com」第一話⑥ - マンション管理人.com

 小説「マンション管理人.com」第一話⑦ - マンション管理人.com