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小説「マンション管理人.com」第一話⑨

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2016.11.19

 

 

「ふ~」雄介は通話を切ると自然にため息をついた。金沢との会話が終わったところだ。すっかり珈琲は冷めてしまったが、常温の珈琲も嫌いではない雄介だ。

 一口飲んで一息つき、思う感覚より美味しく感じた。おそらく転勤希望の交渉がスムーズにいった事の安堵感がより珈琲を美味しくしたのだろう。味覚と言うのは不思議なものだ。

 

 

 「大丈夫だ。俺が全て上手くやってやる。心配するな」金沢の言葉はありがたかった。金沢とは上手く付き合ってきたつもりだが、大きな頼みごとをするのは初めてだったので、正直どう出て来るかはわからなかった。

 前もってのメールで真剣な内容である事が伝わっているとは言え、雄介の言う事を一切遮らず聞き役に徹してくれたので、話の腰を折られることなく現状と、考えられる対応策と自分の想いを上手く伝える事が出来た。

 

 雄介は、金沢が部長になる前に支社で10年連続のトップセールスだったのは伊達ではないなと感じた。こうなって思えば、もう少し金沢の下で勉強したかったと思う雄介だった。

 雄介は、会計を済ませてウインドウショッピングを楽しんだが、適当なところで三宮を後にし実家に帰った。

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 「ただいま」と雄介が帰ると、玄関に知らない靴があった。おそらくケアマネージャーの菅野のものだろう。

 「あ、お帰りなさい。ちょっと時間が早く空きましたので、お父様とお話させて頂いておりました。初めまして、ケアマネージャーの菅野です」

 いま居る状況説明と挨拶をまくしたてて話し、名刺を差し出してきた。

 菅野典子(すがののりこ)と書いてあった。

 「初めまして、長男の小笠原雄介です。今回はお気遣い頂いた電話をありがとうございます」名刺を受け取り、挨拶と礼を述べた。

 

 「そんなとこで立ち話せんと、こっちへ座りや。」と、父が何故か半分怒ったような口調で中へ招く。二人で苦笑いして奥へ進んだ。

 三人でダイニングテーブルに座り、母はベッドを半分起こして座っているような体制で寝ていた。しばしの沈黙があり、菅野が話し始めた。

 両親がすぐ横にいるのに、遠慮なく二人の現在の病気の進行具合にまで、話が進んでいった。

 

 菅野の話はこうだった。母は大変「拒否」が強く、今でも菅野以外を受け入れていなくヘルパーさんが来ると、大変怒って追い返そうとするらしい。雄介が驚いた玄関ドアの張り紙は、母がヘルパーさんを追い返すために貼ったらしい。

 「なるほど、そう言うことか」と腑に落ちた雄介は先日母が言った、パソコン教室を全国的な売春組織だと言った件を菅野に話した。 

 母の頭の中では、全ての話が混ざっているらしい。ヘルパーさんが来ると母が怒り、帰らそうとするが、父が間に入りなだめてヘルパーさんに家事などをしてもらう。

 まぁ当たり前の行動だが、母はある意味の嫉妬を覚えるのだろう。しかも、以前にパソコン教室の女の先生が親切に教えてくれると話した事があるらしい。

 

 過去の不倫への疑いとパソコン教室の女先生とヘルパーさんが、母の中では一つの物語を作っているため、あのような張り紙をしたり怒ってヘルパーさんを追い返したりするらしい。雄介は自分の母ながら、もう普通の人ではないなとおもった。

つづく。

by おしょぶ~

 

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