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マンション管理人.com

管理人をやりながら、世の中の色々を見ていきたい。

小説「マンション管理人.com」第二話⑤

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http://www.ac-illust.com/

2016.12.12

 

 

 雄介は乾杯が終わると、そそくさと個室を出てカウンター前へ行った。
 残りの二人は気にすることなく会話を続けている。三人で飲むのは珍しいが、それぞれ雄介とは飲む機会がそれなりにあった。雄介は肴選びを代表でしたいタイプなのだ。
 

 

 花が舞うは基本和食の店ではあるが、かたくななメニュー構成ではない。
 洋風でも中華でも混ぜてくる。特にカウンターの上にその日の総菜が大皿で並べられている。お客のほとんどは、まずそこからオーダーを始める。
 雄介も例外ではない。と言うか、何が並んでいるか少し時間をかけて見るのが好きだった。
 

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http://www.ac-illust.com/

 

 今日はいつもより多く並んでいる。板さんが久しぶりに雄介が来ると聞いて品数を増やしたのだ。
 「麻婆茄子にポテトサラダ、子持ちししゃもの南蛮漬けに温豆腐、小松菜と厚揚げの煮浸しに枝豆の醤油炒め…」雄介は十皿ある品を一つ一つ声に出しながら、見て行く。
 目の奥が期待に満ち溢れている。
 ママがその様子を、半ばあきれながらも可愛い弟を見るような表情で眺めている。
 
 

 「なんの話をしてたの?」注文を済ませた雄介が個室に帰ってきた。
 「ごめん、仕事の話してしまっていた」と柴田が受けた。
 「いやいや、謝ることないよ。よく飲むときぐらいは仕事の話をするなって人いるけど、仕事の話を省いたら、サラリーマンの話す事半分なくなるわ」と雄介が笑った。
 柴田が「そう、しっかり応えられても困る」と言うと、三人で一斉に笑った。
 

 

 「お待たせ致しました。失礼します」とママがすだれを上げた。
 雄介がオーダーした料理を盛り付け持ってきてくれたのだ。
 「何か楽しそうな笑い声が聞こえていましたね」とママが言うと
 「いや、同期三人で会うのは久しぶりだから盛り上がるよ」と雄介が応えた。
 「はい。子持ちししゃもの南蛮漬けです」
 「お!これ旨そうだな」と柴田が言うと「雄介チョイスでございます」と雄介がふざけて場をリードしていく。

 

 柴田はママがほかの料理を置くのを待ちきれないとばかりに、子持ちししゃもの南蛮漬けに箸をつけた。
 「あ~これ旨い!」
 子持ちししゃもの南蛮漬けは、片栗粉でさっと揚げた子持ちししゃもを板さん特製の南蛮たれに一晩漬けたものだ。温めず常温で食べるのが美味しい。
 「だろ?伊達に三年通っていませんからね」と雄介が言うと、西島が「通っている理由は料理じゃなくて、ママだろ?」とつついてきた。
 「あら、嬉しい」と笑顔で会話を拾って、最後の品を置きママは出ていった。
 「客あしらいが上手いね」と柴田が関心してママの後ろ姿を見た。

 

 つづく。

 by おしょぶ~