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マンション管理人.com

管理人をやりながら、世の中の色々を見ていきたい。

小説「マンション管理人.com」第二話⑦

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2016.12.29

 

 

 「お前、部長の事嫌いじゃないの?」柴田が驚いたように言った。
 「あぁ、と言うか俺は部長が嫌いだとも言っていないし陰口を叩いた事も一度もない」
 「…確かにお前から直接部長の悪口は聞いたことないな」柴田は狐につままれた様な顔になった。
 「雄介、わかっているか?今係長でいられるのはあの人のお陰なの?」と西島が振ってきた。
 「え!どう言うこと?」
 「だって通常うちの会社は社員の都合で転勤なら、降格転勤だろ」

 

 

 雄介の会社は大変営業色の濃い会社だ。会社の都合で動く時はもちろんその様な事はないが、本人が家を買ったとか、実家に帰るとかで転勤なら多くの場合1ランク落とされる。

 おそらくは、その社員都合の転勤でその期のノルマを達成出来ない事が濃厚な為だろう。実際、次にノルマを達成した期に、元の役職に戻る人事が多い。
 別に社則で決まっているわけではない。慣例のようなもので、全国でトップクラスの営業マンなら辞められたら会社が困ると言う理由からか、降格でない場合もある。
 

 

 雄介の成績は悪くはないが、優遇を受ける程の成績でもない。
 「確かに、そう言われればそうだな。俺はてっきり介護が理由なので上層部が理解してくれたものと思っていたが、うちの会社がそれで慣例的降格をスルーするはずないな」
 雄介がそう言うと「だろ」と、何故か西島が得意げな顔をした。
 「じゃ、部長が雄介が降格しないように動いたってこと?」と柴田が確認した。

 「ああ俺、聞いちゃったんだよ。偶然トイレで」
 西島が続ける。「俺が先に大きい方に入っていて、後から誰か入ってきた。それで、たまたまスマホに電話がかかってきた様で、声で入って来たのが部長だとわかった。部長の話し方がすごく丁寧だから、クライアントか社内なら役員クラスだなと思いながら聞いていた」
 

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 「うん。それで」柴田が相槌を入れる。
 「内容は詳しくわからないけど、今回小笠原は係長のままで転勤と言う事で何とかなりませんか?みたいな事を言っていたよ」
 雄介は西島の言う事を、一言も漏らさない様な顔で聞いていた。
 「最終的に部長の力かは俺には判断できないが、雄介の為にあの人が動いたのは事実だと思う。あの人良いひとだよ」と西島が話を纏めた。
 

 

 「なんか、話の方向が違う方向に行きだしたね」と柴田が苦笑いした。

 「いや、話の方向は違わないよ。俺は部長と言う人を嫌いじゃないよって事を雄介のエピソードで証明しているわけです」と少し悪戯な顔をした。
 雄介は一本とられた様な顔をした。

 

つづく。


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