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小説「マンション管理人.com」第二話⑨

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2017.01.09

 

 「まず柴田に聞きたいんだけど、うちの課で俺が課長になってからの、労働環境面で何か変化を感じるか?」
 柴田は虚を突かれて、試されている感じを覚えたが正直に答えるしかないと思った。
 「申し訳ない。そう聞く限りは何かあるのだろうが、わからない」
 雄介はその正直な返答に、柴田の人となりを感じた。
 

 「うん。柴田だけでなく、みんな感覚が鈍っているんだよ。お前も含めて俺の課全員の残業時間は俺が課長になる前の20%削減出来ている」
 「え?…」と言う言葉とともに柴田はしばらく考えこんだ。
 西島が続ける。「俺たち営業は、残業手当でなく見込み時間を営業手当としてもらっている。何時間分か知っているか?」と二人に投げかけた。
 

 柴田の答えが出て来ないのを確かめて、雄介が答えた。
 「40時間だろ」
 「そう。基本的に月間残業をこの時間内に収めるのが理想だ。俺が課長になるまでの現状は何時間だと思う?」
 「みんなの平均だろ?う~ん。そうだなぁ60時間ぐらいか?」と柴田。
 雄介は西島の呆れた顔を見て、フォローも兼ねて答えた。

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 「最近だと営業目標もきついし、まずクライアントの決裁者をつかまえる時間が遅くなっているのも踏まえると、80時間は超えていそうだな」
 「ああ、全支店の数字は把握していないがうちの課で80~90時間、となりの課で100近くだ」
 となりの課とは第二営業課である。西島は第一営業課を担当している。
 「そんなにいっているのか」と半ば他人事の様に柴田が驚いた。
 

 そして、西島がまるで労働問題の専門家の様に解説を始めた。
 その内容は概ねこうだった。現状、長時間労働災害のリミット80時間を超えている事、その対価は支払われていない事、現場の上司に改善意欲が低い事、営業の管理に必要以上の精神論が使われている事、その営業の動きが原因で内勤者の労働時間も長くなっている事などを説明したものだった。

 

 雄介と柴田は黙って聞いていたと言うより、口を挟めなかったと言うのが正直なところだ。西島がまくしたてた後、しばらく沈黙があって後…

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 「話はよく分かった。でもそれお前の仕事なのか?」と柴田が聞いた。
 西島が答える前に雄介が口を挟んだ。「間違いなく現場の長の仕事だな」
 「おいおい、お前まで…」と柴田が行き場をなくした。 
 

 「それに関しては俺も気になっていた事があるんだ。制作の残業が明らかに異常で、それは俺たちが原因かなと」
 「俺たち三人が何をしたって言うんだ」と柴田。柴田は酔いが回って頭の回転が落ちているなと心の中で苦笑しながら雄介が言った。
 「俺たちって言うのは営業全体だよ」
 「あ!」と声を出し、柴田が少し恥ずかしそうな顔をした。

 

 つづく。

 

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