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マンション管理人.com

管理人をやりながら、世の中の色々を見ていきたい。

小説「マンション管理人.com」第三話①

小説「マンション管理人.com」
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https://www.ac-illust.com/

2017.03.01

 

 

 つい最近十年に一度あるかないかと言われた寒波が来ていたのが嘘の様に、暖かくもう春と言っても良いのではないかと思わせる、2月下旬の月曜の朝だった。
 オフィスに来る途中にある「ドトール」で買ったブレンドのSサイズとジャーマンドッグを、テイクアウト用の袋から出そうとした時に後から声が掛かった。
 

 「小笠原さん、2番お電話です」庶務の嶋村ゆうこだ。
 雄介はオフィスにかけられた時計を見た。8時12分、まだ始業まではかなりあるが、朝早くかけて来るクライアントは少なからずいる。
 「え!どちら様から?」と嶋村に振ると、高卒で入社してまだ一年経っていない、幼い顔が困り顔をつくっている。
 

 「ちぃ、またか!」雄介にしては珍しく舌打ちをして電話に出た。
 「もしもし…」
 「あ、雄介か?」
 「親父、何かあれば会社じゃなくて俺の携帯に電話してくれって何度も言っているだろ!」いけないと思いつつ、強い口調になってしまう雄介。
 

 「で、どうしたの?」
 「いや、母さんのおむつがもう少しで無くなるから帰りに…」
 途中で遮り「朝、その話はしただろ?俺が会社の帰りに買ってくからって!まだその話をして2時間も経っていないぐらいだぜ親父」イラついた。
 

 「そうやったかいな…」と父が言うか言わないかで、ガチャンと切ってしまってから、切り方が悪かったかなと反省する雄介だった。
 雄介は振り返って嶋村に手で「ごめんな」の合図を送った。
 嶋村ゆうこは、雄介に同情するようにまた困り顔をつくるだけだった。

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https://www.ac-illust.com/

 

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 このところ雄介の父の様子が少しおかしい。この様なとんちんかんな電話をよくかけて来るようになったし、家でも会話がかみ合わない事が増えてきていた。
 雄介はケアマネージャーの菅野に相談しないといけないかな?思い始めていた。

 

 「おーい読み会始めるぞ」と課長の里 穣から声がかかった。読み会とは毎週月曜日に今週の営業において、クロージングをかける社名と受注の角度を報告する会議だ。

 角度とは、クロージングをかけておそらく受注出来そうならA、半々の見込みでB、正直ネタがないが苦し紛れでクロージングをかける先をCと報告する。

 各営業マンがバッティングしていないかの確認も兼ねているし、今週の売り上げ予測を立てて課長が部長に報告する。

 

 雄介はこの会議で、一週間で角度Aの会社を5社報告して周りをざわつかせた。

 この週だけで言うと、全国トップレベルの営業状態で里からも特別に声がかかった。

 「雄介、絶好調!」と少しからかったトーンだが、悪い気はしない。

 「仕事は良いですけどね…」と苦笑いして会議室を出る雄介の後ろ姿を里は見送りながら、小声で「親がなぁ」と天を仰いだ。

 

つづく。

by おしょぶ~

 

※この小説の一話・二話はこちらから↓

小説「マンション管理人.com」 第一話①~⑩ まとめ版 - マンション管理人.com

小説「マンション管理人.com」 第二話①~⑫ まとめ版 - マンション管理人.com

 

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