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マンション管理人.com

管理人をやりながら、世の中の色々を見ていきたい。

小説「マンション管理人.com」第三話④

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https://www.ac-illust.com/

2017.05.02

 

 雄介はJR三宮駅前の行きつけの喫茶店「西村」にいた。ちょっと酸味が勝っているここのブレンドを飲みながら、ゆっくりと考えを巡らせていた。

 直属の上司である里、東京から来た総務課長の小林と介護休職の話し合いをしてから3週間が経っていた。結局、雄介は介護休職をとる道を選んだ。

 

 雄介のクライアントはしばらくの間、里が担当する事となった。

 「え!課長が担当をされるのですか?」と雄介は思わず大きな声を出した。2週間前の小会議室だ。

 「ああ、それが一番いいだろう。おれは雄介が帰って来る前提でこの話を小林と進めた」

 「はい。ありがとうございます」

 「その時、雄介のクライアントを他の営業各人に振ってしまっていれば、部長は別の営業所への人事も考えかねないからね」と言ってウインクをしてみせた。

 里は日本人の、この世代には珍しくウインクとか投げキッスとかを平気でする、ラテン系の男だが、雄介は照れくさくてその仕草を直視出来ない。

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https://www.ac-illust.com/

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 「しかし、課長がわたしのためにプレイングマネージャーになるのは、ちょっと気が引けますね」雄介は本気で言った。

 雄介のクライアントは大口が多く、課を切り盛りしながら管理するにはかなりの負担になるはずだ。

 「なぁに、おれの手にかかれば課と雄介のクライアント様のお守りなんて小指だよ!」と軽口をたたいた。小指とは里がよく使う簡単と言う意味だ。

 

 ただあながち冗談ではない。里が係長時代に作った神戸第一営業課の個人年間売り上げ最高記録は今も破られていないのである。

 「まぁ雄介は介護体制をつくる事に集中して、早く帰って来てくれたらそれで良いんだ」と里は雄介の肩を強く叩いた。

 

 そんなやり取りを思い出しながら、お気に入りの珈琲を口に運ぶ雄介のスマホがふるえた。画面を見ると姉のさゆりからだ。苗字は明石に変わっている。

 「めずらしいな」とひとりごちした雄介が電話に出ると甲高い声が聞こえてきた。

 「あんた!突然に仕事を辞めたらしいやないの!どうするのよ」と、久しぶりに話す弟に挨拶の愛想もなく、話始めるさゆりに姉らしいなと思い苦笑した。

 

 理由はわかっている。父から話が曲がって姉の耳に入ったのだろう。苦笑いを続けながら、雄介は事の流れの説明を始めた。

 

つづく。

by おしょぶ~ 

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