おしょぶ~の~と

旧ブログ名「マンション管理人.com」2017.08改名

小説「マンション管理人.com」第三話⑤

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2017.07.18

 

 

    季節は春から梅雨に進んでいた。

 雄介は、最近のケアマネージャーや特別養護老人ホームの事務方との話し合いを思い出しながら、洗濯物を取り込んでいた。

 雨の合間の晴れ間がこんなにありがたいものとは、本気で家事に取り組み出した雄介は初めて感じた感情だった。

 

 打てる手は全て打った感がある。

 後は絶望的な、200人待ちと言う特別養護老人ホームの待ち人数の現実があるだけだった。

 

「あと、一か月ぐらいなんとかプレイングマネージャーで頑張るよ」と電話の向こうで話す、雄介の直属上司である里の言葉がありがたいが重たかった。

 雄介に与えられた「介護休職制度」の期限は93日間だった。これは法定で決められた日数だが、体力のある会社は独自でもっと長い制度があるところもあるが、雄介の会社はこの法定に沿った制度をとっている。

 

 雄介の中で、ある言葉が現実味を帯びて来ていた。

 「介護退職」…介護休職に入るだんでは頭の片隅にもなかったが、母の入所が進まないのに加え、父の認知症の進み具合が更に状況を厳しくしていた。

 

 ケアマネージャーの菅野が言うには、次の認定で要介護度は1から2に上がるだろうとの事だ。父は身体が動くので身体的な事ではなく、つまり頭の具合が相当進んでの要介護度UPとなる。

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 そう言えば、最近父と話していても途中で話が合わなくなる。菅野が言うには初めの方の話は途中で忘れるらしい。

 菅野の言葉で、今でも頭に残っているものがある。

 「息子さん、認知症の忘れるは忘却ではありません。昔のミュージックテープで新しい曲を入れるようなものです。つまり消去です」

 

 この説明はすごく腑に落ちた。すとんと頭の中に入り理解出来た。

 「今さっき話した事だろう」とか「いや、5分前に食べ終わったばかりやろ」とか…ずっとイライラして父と接していたが、忘れるのじゃなくて「その過去の話や事柄自体が無かったものになる」のだ。

 

 父には、話した過去が無いのだから「同じ話」をまたする。父には、食べた過去が無いのだから「食事はまだか?」とまた言うのだ。

 しかし、身内と言うのは不思議だ。病気だから仕方がないと雄介も理解しているはずなのに、同じことを言われると心底腹が立つのだ。

 これが自分のストレスになっている事を理解しながら、コントロール出来ない雄介がいた。

 

  つづく。

  by おしょぶ~

 

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