おしょぶ~の~と

食レポを中心に、いろんな事を書いている雑記ブログです。

小説「マンション管理人.com」第3話⑥

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2018.01.09 

 

 「残念だよ、雄介…」里は言った。続く言葉は出てこない。里の右手には雄介が出した退職願が握られていたが、封筒は開けられていなかった。

 中身は会社の雛型に沿った「一身上の都合により…」と始まる文章であることは分かっているし、何よりその一身上の都合がどんな内容か里は知っていたので、読む必要もない。たんなる形式上のものだった。

 

 場所は会社の会議室だ。二人の前に置かれている珈琲はとうに冷めていた。

 「雄介、失礼な事を聞くようだが専業介護になって生活は成り立つのか?」

 「しばらくは両親の貯えと、少ないながらも年金がありますので…」 

 「そうか、それなら良いんだが…で、どうなの?お母さんが施設に入れる見込みは」

 「見込みと言うか…200人待ちですから」雄介は力なく笑った。

 「200人!」里は絶句した。

 

 雄介は今までの感謝の気持ちを里に伝え、会議室を後にした。

 後ろから声がかかった。「何かあったら、電話して来いよ!」里の性格からして、社交辞令ではないだろう…雄介は振り向き軽く頭を下げ、踵をかえした。

 

 オフィスビルを出ると、強い風に打たれ思いのほか冷たく感じた。季節はもう秋を迎えていた。

 「さて、くよくよしてもしょうがない!今日は憂さ晴らしに飲んで帰るか!」雄介はわざと大きな声をだして、自分に言い聞かせるように歩を進め目の前の横断歩道を渡った。

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マンション

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 小料理屋派の雄介だが、これからのお金のことを考えると立ち飲み屋の選択になった。神戸はけっこう立ち飲み屋が多い。特に最近、若者・OL対象にオシャレで価格も一般の飲み屋より高い立ち飲み屋が多く出来ている。

 

 それがまたよく流行っているが、雄介は立って飲むのに他の店より高いと言うのを、理解出来ないでいた。

「久しぶりの立ち飲みなら、とことん立ち飲みらしいのがいいな…」誰に聞かせる事もなく、ひとりごちした雄介の足は元町に向かっていた。

 

 「石原商店」…ただの酒屋だ。雄介はどうせならと「角打ち」と、シャレ込んだ。店内はとってつけた様なカウンターと、ビールの空き箱を逆さに重ねて板を置いたテーブルがあるだけで、床にはゴミがいっぱい転がっていた。客層は全員おじさんだ。

 

 角打ちの良いところは、飲めるお酒の多いところだ。そらそうだ、酒屋なのだから。

 雄介が店内に入ると、「いらっしゃい」と愛想が良いとは言えないが、こなれた声が心地良かった。

 「瓶ビールとポテトサラダで…」

 「あいよ!」と、手慣れた手つきで大瓶の栓を抜きコップを頭にかぶせて、雄介の前に置いた。ほどなく出てきたポテトサラダを見て、少し雄介は驚いた。

 

 「おやじさん、ポテトサラダ業務用じゃないんだね」

 「あんなもの、不味くてお客に出されへんわ」

 雄介はしばらくここを根城と決めた。

 

つづく。